認知症診療 | since 1998 |
講演会で使用したスライドです。認知症理解の一助になれば幸甚です。
1.認知症とは
脳の変性疾患や血管障害によって、記憶や思考などの認知機能に低下が起こり、日常生活に支障をきたしている状態。
認知という概念は幅広い(認知機能低下の具体例) | ||||||||||||||||||||||||||||
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小阪憲司:レビー小体型認知症の介護がわかるガイドブック 改 |
アルツハイマー型認知症
ゆっくり発症ゆっくり進行、初期から記憶・ 記銘障害(もの忘れ)、もの忘れの自覚がない、人格変化や被害妄想の頻度が高い。 女性に多い。
レビー小体型認知症
パーキンソン症状(振戦、筋固縮、無表情、 無動・寡動、姿勢反射障害)、リアルな幻視、レム睡眠行動異常、初期には記憶障害が目立たない。
脳血管性認知症
脳血管障害が原因で、片麻痺、しびれや構音障害などで急性発症、初期には物忘れを自覚している。男性に多い。
前頭側頭型認知症
情緒障害、自制力低下(粗暴、悪ふざけ)、 異常行動(浪費、過食、窃盗)、感情鈍麻、 常同行動、人格変化(無欲、無感心)、 会話が少なくなり感情荒廃。
2.認知症の原因
アルツハイマー型認知症
アミロイドβが脳の神経組織に沈着し、神経組織が変性して行き脳全体の委縮が起こる。
レビー小体型認知症
レビー小体が脳の神経細胞に沈着する。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により脳組織の死滅が起こり発症する。
3.認知症の症状
中核症状(認知機能障害)
脳の認知機能が障害されるために起こる症状 で、認知症になると程度の差はありますが、ほとんど全員に見られるようになります。
記憶障害
火を消し忘れる、薬を飲んだことを忘れる、同じ物を何個も買う
判断力の障害
服が着れない、車の運転に支障、悪徳商法にひっかかる
見当識障害
道に迷う、人が誰だかわからない、日時季節が分からない
失行
着替え,歯磨きができない、リモコンが使えない、入浴の仕方が分からない
失認
家族が誰だかわからない、「そこの醤油とって」と言っても分からない
構音障害、失語
言葉数が減ってくる、コミュニケーションがとれない
⇒ 問題解決や実行機能が障害される |
周辺症状(認知症に伴う行動心理症状:BPSD)
環境や人間関係などが影響して引き起こされる症状で、全ての人に起きるわけではありません。
行動に関する症状
抵抗、暴言、暴力、攻撃的行動、 過食・拒食・異食、徘徊、せん妄、不眠
心理に関する症状
不安、無気力、抑うつ、心気症、妄想、 脱抑制、多幸、幻覚、易刺激性、興奮、焦燥
家族が最初に気づいた認知症高齢者の日常生活の変化
●同じことを何回も言ったり聞いたりする
●財布を盗まれたと言う
●だらしなくなった いつも降りる駅なのに乗り過ごした
●夜中に急に起き出して騒いだ
●置き忘れやしまい忘れが目立つ
●計算間違いが多くなった
●物の名前が出てこなくなった ささいなことで怒りっぽくなった
東京都福祉局「高齢者の生活実態及び健康に関する調査・専門調査報告書」1995より
認知症早期の軽微な精神・行動変化
1. 玄関先で靴を揃えて脱いでいない。
2.歯磨きや入浴などの整容が下手、減るあるいは増える。
3.食事の味付けに微妙な変化がみられる一般的には味が濃くなる。
4.連日同じ服を着たままだったり、朝、寝間着のままでの時間が増える。
5.テレビをつけたままだったり、好みの番組が減少する。関心も減る。
6.ボンヤリする一方で、涙もろさ・怒りっぽさが目立つ。
7.ささいなことで心配するようになる。
8.一瞬の不安の表出、場違いの照れ笑い、独り言、昔話をしたがる。
9.近所の人やテレビタレント・政治家への批判が増える。周囲のひとにも説教がましくなる。
10.ひ弱、恐がり、寂しがり屋になる。
これらは意欲、自発性低下、抑うつ、不安といった精神症状を表現しているがこのような、これまでとは異なる変化に気づいたら認知症を疑う。(全てのタイプの認知症にあてはまる。)
堀口 淳 精神神経学雑誌 2012;114;251
西日本新聞より |
4.認知症の検査、診断
・最も重要なのは問診です。症状の発症時期やその特徴などはもちろん、今までの生活状況とか歴史、服薬内容など詳しくお聞きする必要があります。初期には認知症の方は自分が認知症とは思っていないので、ご本人の話とご家族の話を比べることが大事です。
・認知機能テスト
長谷川式簡易認知症評価スケール(HDS-R)
ミニ・メンタルステート試験(MMSE) etc.
・血液検査
液一般生化学、甲状腺、VitB群 etc.
・頭部画像診断(認知症疾患医療センターにて)
CT、MRI、PET、SPECT、脳血流シンチetc.
5.認知症の治療
6.認知症の予防
上記は認知症の古典的危険因子です。
認知症前段階と言われるMCI(軽度認知障害)に早くきずくことが大事です。MCIの段階ならば認知症への進行を防ぐことも可能と言われています。
7.認知症の方への接し方
認知症は始めは痴呆と呼ばれ、人格が崩壊すると言う間違った解釈がなされていましたが、現在は上記のように感情、意思がしっかり保たれていることがわかっています。
認知症の方への接し方が特に重要です。
8.認知症施策の動向
七つの柱 |
@認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
A認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
B若年性認知症施策の強化
C認知症の人の介護者への支援
D認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
E認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
F認知症の人やその家族の視点の重視
認知症サポート医としての実績 |
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